炭水化物、タンパク質、脂質はエネルギーのための3大栄養素で、これに体調を整えるためのミネラルとビタミンが加わったのが5大栄養素です。これらの仲間に入っていないにもかかわらず、体にはなくてはならないのが水分です。
「1日にどれだけの水を飲めば良いのか」は良くあるご質問です。答えは「体重×50ミリリットル」になります。ほとんどの犬猫はたいていこのくらいは摂取できています。純粋に水だけでこの分量は減っていないと感じるでしょう。ドライフードの他に水分を含んだ食事を食べているとそこからも水分は摂取しているので、与えた分が必要量よりも下回っている可能性は十分考えられます。不感蒸散の多い夏やや暖房の部屋にいるとき、運動量が多いとき、塩分が高めのフードを食べている場合は、必要量以上の水を欲しがる可能性があります。さらに、飲水量が増えてしまう病気のこともあるし、たくさん水を欲しがるような薬を服用しているときも多めになります。
体の60%から65%は水でできています(高齢動物の方が水分の割合は低いです)。犬や猫が好んで水を飲み、脱水を起こすことがないようにしてやりたいです。単に「水」と言っても個体により好みの水があります。水道水よりはペットボトルの水を好むとか、くみ置きの水が好きだとか、市販の水でもブランドにより好みが違うこともあります。さらに猫では、動く水が好みだとか、水食器の形態がウイスカーストレスになるとか給水器の形態によっても飲水量に変化が発生してきます。さらに多頭飼育の場合では、簡単に水にアクセスできるのかどうかといった心理戦も関与してくることがあります。水食器とフードボウルが隣にあって、口にしたフードのかけらが水食器に落ち水が濁っているといやがる場合も出てきます(自分で汚したくせに!)。水に対する配慮はさまざまな方面から出てきますので、「好みの水」を「飲みやすい形態の容器から」「常に清潔な状態で」「のどが渇いたと感じる前に」「いつでも自由に」飲めるような体制を作っておくことが重要です。
さらに動物側の要因も考えておきたいところです。口腔内に、腫瘍や口内炎、歯周炎などの問題は発生していないかどうかや、膵炎や腎臓病、重度の糖尿病などで吐き気があるために摂水が困難になっていることはないかどうか注意が必要です。糖尿病や副腎の病気により異常に水を欲しがることもあります。「飲まないこと」も「飲み過ぎること」にも注意を向け、異常を感じた場合は早めの来院をお願いします。