心臓病や腎臓病など、治ることはない病気があります。肝臓病や内分泌の病気、関節の病気でも癒えることですが、多くの慢性疾患の内科療法は、病気と共存しながら、身体が悪い方向に向かうのを遅らせ、状態良く維持していくことを目的にしています。
しかしこうした病気では薬を与えていることで安心してしまい、生活の諸注意を忘れられていることがあります。薬の恩恵によって得られた生活が良好すぎて病気を忘れるほどなのかもしれません。もしくはそれまでの習慣がそうさせている可能性もあります。
たとえば、心臓病では運動を制限し、塩分を控えること、腎臓病では高ナトリウム食や高タンパク食を控えることは身体を苦しめないために必要なことです。また慢性の腸疾患やアトピー性皮膚炎(食物アレルギー)では特定の食品を摂取しない、または即別療法食以外は食べないことが症状緩和につながります。こまめな薬浴も状態良くすごさせるために大切です。
病気の経過が長くなり、安定期になっていると、ひどかったときのことは忘れてしまいます。もちろんはじめの諸注意もすっかり忘れられています。そのためおやつたっぷり、運動もしたい放題、処方食以外のものが少しだったのがいつの間にか大半を占めるようになってしまっています。シャンプーもてぬきになりがちです。しかしせっかく安定していた状態がまた崩れてしまう可能性は大きく、その影響はそのまま動物たちがかぶることになります。
犬も猫も自分では「禁止事項を破ってしまった結果」をあらかじめ知ることはできません。安定していても禁忌事項を忘れることなく、良い状態で日常を過ごせることに感謝していただけたらと思います。