約1年程前から、犬のアレルギー性皮膚炎またはアトピー性皮膚炎による激しい痒みを抑えるための新しい薬が出ています。1回の注射で、安全で効果的な作用が1か月、うまくすると2か月近く続く治療法です。
アレルギー性皮膚炎の痒みに対する従来の治療薬とは作用機序が異なり、犬自身の免疫システムのように機能します。痒みのタンパク質であるインターロイキン(IL-31)は痒みを引き起こすシグナルを脳に送り、ひっかいたり舐めたり噛んだりするきっかけになりますが、このお薬は痒みのタンパク質を標的にして中和するように設計された生物学的薬物(モノクローナル抗体といいます)で、化学薬品ではありません。タンパク質でできています。アレルギー性の痒みを起こす信号を、このタンパク質がブロックするので、これまで絶え間無くひっかいていた行動が止み、赤く炎症を起こしていた皮膚が治癒します。
併発疾患があって多くの薬を服用している犬でも、高齢の犬でも、この注射を受けることが可能です。また化学薬品ではないので、肝臓や腎臓に負担をかけることがありません。
最初の注射から4週間、「カイカイ行動」をしっかり監視して、その経過を知らせてください。もし、まだ痒み行動が再発していなければ次の注射を延期することができます。
痒みがなくなると犬は掻くことをやめるので、二次的に発症していた皮膚炎から解放されることになります。
現在の治療法で八方ふさがりになっているときに、ひとつ打開策ができた感じです。
しかし、スキンケア療法や食事療法をなくすことができるわけではありません。あくまでも投薬に苦慮していて、解決策に困っていた犬に限られますが、該当するわんこたちに選択肢として提示していきます。