去勢済みのオス犬なのに、未去勢のオス犬と同じように排尿障害が出るとき、事態はもっと深刻です。
前立腺肥大は未去勢のオス犬だけで、去勢オスでは起こりません。去勢済みのオス犬なのにオシッコがちょろちょろな場合、膀胱や尿道の病気も考えますが、生理的に前立腺が肥大することはないので、考えられるのは「前立腺がん」で、事態はより深刻です。
ちょろちょろオシッコに代表されるような排尿困難に加え、排便障害も出てきます。ウンチはコロコロしたものが出てくる場合もありますが、きしめんのように平らにつぶれたウンチを、踏ん張って踏ん張って、力いっぱい腹圧をかけて出すようになります。時折、血がついていたりもします。歩き方にぎこちなさが出ることもあります。
急いで診察にいらしてください。「もうちょっと様子を見ようか」とか、「このくらいなら大丈夫なんじゃないか」といった楽観的な観測は最良の治療のチャンスをのがすことになります。
病院では、直腸検査、超音波検査、尿検査のほか、X線検査や血液検査、細胞の検査を実施します。
完全な治療のためには外科手術が必要です。前立腺の摘出手術です。ステージによっては膀胱を含めた手術が必要になってくる場合があります。手術に踏み切れないときは抗がん剤による治療で腫瘍が大きくなるのを遅くするようにします。しかしいずれは排尿や排便に問題を起こすので、それらの排泄路を作るための造成術を行う必要が出てくることもあります。